2017年 コープ・イン・京都にて ディオニー株式会社オリジナル 根知男山耕地2016 発売記念セミナーに行って参りました
こんにちは!
サブです!
秋ですねー。
1年の内で最も過ごし易い季節。
そんな中、わたくしサブは取引先であるディオニーさんの新商品発表&セミナーに行ってきました。
きっかけは、店に置いてあったチラシを見て
(30名限定とあるし、セミナーとあるし、ティスティングもあるし、基礎的な勉強になるか)
と思い、
「これボク行きます」
と志願しました。
しかし、ボクが日本酒の話が聞けるとイメージしてたものとは全く違う内容で、良い意味で期待を裏切られました。
やはり行ってみるもんです。
いい話が聞けました。
いい出会いでした。
セミナーの講師は渡辺酒造店・代表社員・渡辺吉樹さん。
今回ディオニーが発表した新商品「根知男山耕地 2016」の製作を担当した蔵元です。
まずは、ディオニーの前田社長が渡辺さんとの出会いから、今回のお酒の企画・開発に至るまでの経緯を述べ、続いて渡辺さんのお話が始まりました。
「ワタシは、既成の蔵の人間みたいに吟醸酒は何々・・・純米酒は何々・・・醸造方法は何々・・・みたいな話はしません。もちろん、聞かれれば答えますが・・・」
との出だし。
机の前には純米大吟醸、吟醸酒、純米酒のテイスティング準備がされていたので、
(思ってたんと違う!)
と内心叫んでいましたが、そこから始まった話は酒というジャンルを超えた興味深いものばかりでした。
彼方此方にメモして、自分の頭で理解したものをうまく伝えられるか不安ですが、とにかくその内容をできるだけ忠実に再現したいと思います。
農醸一貫
まず、従来の酒蔵は契約農家に酒米の生産を依頼しています。
しかし、渡辺さんの蔵では、原料米は94%自社栽培です。
すなわち、自ら作ったお米をお酒にする。
渡辺さんが蔵に来た当時は、兵庫県まで山田錦を買付に行ったこともあったし、出稼ぎの蔵人が11月から4月まで蔵に入って酒造りをするといった従来の酒蔵スタイルでした。
現在は渡辺さんを含む10名の社員が4月から9月まで米を作り
3月から10月まで酒造りをするというスタイル。
渡辺さんの考えは、
「兵庫県の山田錦で造ったお酒が本当の意味で新潟県根知谷のお酒か?」
という疑問から
「根知谷の水が、根知谷の風土が作った米が酒になる。それが本当の根知谷の酒である」
という結論に至ります。
酒米に山田錦ではなく、五百万石を使うのも新潟で育成された品種だからです。
ちなみに今回の新商品である「根知男山 耕地 2016」の酒米・越淡麗は
お父さんが五百万石で
お母さんが山田錦。
五百万石の味の輪郭は複雑。
透明感のある越淡麗は奥手の品種の特徴のせいか新種の時は物足りないくらいキレイであるとのこと。
農業(米作り)
渡辺さんは、
「私自身、ベタベタの百姓ですから」
と自らを評します。
「酒の味の説明は米の出来の説明」
「米の出来はその年の気候の説明」
そう語る渡辺さんは、2016年の気温、降水量、日照のデーターをグラフ化し、重要な分月(根が増える時期)や穂が増える時期などとの関連性を説明されました。
「既存の蔵ではここまでの細かい米の状態はわかりません。よって、説明ができない。我々はすべて説明できます。」
「同じ場所で同じ条件で同じ者が造るのに、でも1年ごとに味が違う。なぜか?当たり前のことですが、天候が年ごとに違うからです」
ここに日本酒のヴィンテージという概念が生まれます。
ブドウの出来で毎年味が違うワインのように・・・
しかし、味の変化を最小限にする努力は当然ながら怠りません。
お酒を搾る部屋は年中24時間冷房除湿。
「従業員には『床を舐めることができる』くらいの清掃を徹底させます。
微生物はほんの少しの庫内の温度の変化に反応してしまい、微妙な味の変化をまねきます。それを阻止するためです。」
一年中、根知谷にいて米作りをしながら自然と向き合う日々を送り続けます。
そうした経験からくる自信の言葉の数々でした。
根知谷の自然
「向こう(海外)からくる人間は必ず聞いてきます。土壌はどうだ?地質はどうだ?気温はどうだ?細かいくらい聞いてきます」
渡辺さんは根知谷のスペシャリストです。
根知谷の地形からもたらされる自然の恵みをプロジェクターを使って語ります。
「この谷にはカモメもやってきます。風がカモメを運んできます。この風が湿気を乾かし稲の病気を減少させます」
「究極の水とは、ボクは雨水と考えてます。ここは日本名山100に選ばれた雨飾山から雪解け水が農業用水として流れてきます」
「仕込み水は蔵にある井戸から取りますが、井戸の底に川が流れています。酒の輪郭は水が決めます。うちの仕込み水はいわゆる軟水です。柔らかくて軽く女性的。酒のブランド名が『男山』なのに何ですが(笑)」
「根知谷は見渡す限り農地です。人家は一軒もありません。」
「根知谷ですべてを完結させます。
『ボルドーでつくられているカベルネソーヴィニヨン』
と考えてもらえば分かり易いでしょうか」
「海外でのプレゼンはオリジナリティーと分かり易さ。オマエの蔵の説明は分かり易いと言われる」
根知谷の自然に寄り添い、根知谷の自然の声に常に気を配っている渡辺さんだから言える言葉です。
質疑応答
ー山廃仕込などは考えておられないでしょうか?
「酒造りは最初にこんな味が造りたいという理想や目標があって、そこに向かって進めて行くというやり方が普通だと思うのですが、我々のやり方は違います。
与えられた条件を活かす方法です。
『五百万石のキャラクターをどう活かす?』
『越淡麗のキャラクターをどう活かす?』
水の性質などとの組み合わせから最大限の成果が出るよう常に創意工夫は考えていますが、余計なものは一切いれません。
山廃仕込という強烈な個性が入ることによって、本来持っている五百万石や越淡麗の個性が死んでしまったら我々のやっていることの意味はなくなります。
そう言った要請がないこともないですが、それをやる時期でもないかなという気がします。」
ーヴィンテージものの保管方法は
「セラーもしくは5度の冷蔵庫を推奨します。」
「2005年のものがテイスティング用として残ってありますが、ぜんぜんいけます。長期熟成に対応したボトリングを施してます。いわゆるワンパスで、5度の冷蔵庫で保管してます。」
「『耕地』は今年が初年度です。2016年ものの『根知男山』純米酒や純米吟醸と水平での比較はできますが、垂直の対比は来年以降の積み重ね。非常に楽しみです。」
日本酒にワインの概念を持ち込んだ「耕地」は、ワインの店を標榜していく安井商店にとってもお客様にその価値を説明しやすいアイテムではないかなと考えます。
「あっ」と言う間の2時間が過ぎ、セミナー終了後も渡辺さんの元に名刺を持って駆け寄る参加者が後を絶ちませんでした。
わたくしも質問したかったし、お話したかったのですが、
(何を聞こうかなー)
(何を話そうかなー)
などと考えているうちに機を逃してしまいました。
いろいろ浮かんだのですが、どれもトンチンカンな気がして・・・
例えば、
「渡辺さんが美味しいと思ったお酒はなんですか?」
みたいなことも参考のために聞いてみたかったのですが、渡辺さんの酒造りの趣旨が味の目標に向かっていないことは、お話を聞いてる限り明らかなので引っ込めました。
何より
「この人スゴイなー」
と思ってしまうと、知り合いになりたいより先に自分の小ささに萎縮してしまう性格が災いします。
帰りの電車の中でひっそりと渡辺酒造さんや渡辺さんの検索をする。
日本酒の消費量の減少。
村の過疎化への懸念。
美しい田園風景を含む自然の景観を守ることの意義。
酒造りだけに留まらない、しかし、酒造りを通して見た地域への危機感が渡辺さんを突き動かしてることがわかります。
危機感の源は根知への深い愛情です。
渡辺さんには5年10年先の根知のあるべき姿が見えています。
危機感を持っている人間は常に現状の努力や準備を怠りません。
一歩づつ、確実に自分の思う方向へと歩を進めます。
ちゃんと身の丈にあった取捨選択をしながら・・・
大義のある魅力的な人物です。
最後に、根知谷の自然や物語がそのままボトルに詰まった渡辺酒造のお酒は大変美味しかったです。
(やっぱり、まだまだ話かけられないなー)
私も少しずつ前進前進です。
オッス!