大きく変化する栗東トレセン
今後はどこへ向かうだろうか
今年の開業は7厩舎。
新人ジョッキーのデビュー予定は6名。
3月には栗東トレセンの状況は大きく様変わりする。
私も安井商店にお世話になってから20年の月日が流れたが、ここまでの数の新規開業やジョッキーのデビューは記憶にない。
新たなる一歩を踏み出す者がいれば、去る者もいる。
開業に伴う勇退調教師は7名。
慣れ親しんだ調教師さんがトレセンを去っていく。
年を取ったせいか、年々、その寂しさは増す。
傍から見ていても、調教師さんの仕事はシビアだ。
馬の管理、人(従業員)の管理、オーナー(馬主)との折衝、
言わば社長業。
そして毎週訪れる競馬。
残酷なくらいの現実(着順)を短いスパンで突きつけられる。
引退した調教師さんと顔を合わすと、皆、憑き物が取れたかのように穏やかに感じられる。
そして、調教師さんを支えた奥様方。
近年の調教師さんは厩舎の経営や事務などに奥様を携わせないスタイルが主流だ。
新規の開業厩舎には事務員さん配備が慣習となりつつある。
「仕事と家庭は別物」
近代厩舎の運営はそう線引きされた感がある。
私がトレセンに出入りし始めた当時は厩舎へ配達に行くと、
女将として常駐している奥様が
「配達お疲れ様ーー」
と声をかけてくれる。
「いつも大変ねー」
「いただきもんやけど配達の間に食べてねー」
とお菓子を渡してくれるなどが常であった。
暑い日にはドリンク剤、
寒い日にはカイロを持たしてくれた方もいた。
私は関係者と部外者のグレーゾーン的立場なので気安く接していただき、世間話や厩舎の苦労話など、気が付けば一時間経過みたいなことも多々あった。
このように20年前のトレセンの風景は
まだ長閑さの残像があった。
仕事場(トレセン)に家族ごと張り付き、
社宅には人が溢れ、
マーケットも活気があった。
すれ違う人がみな顔見知りで、元気であった。
家族的な世界がそこにはあった。
あれから月日は経ち、トレセンの人たちは社宅から離れ、生活に便利な住宅地へ移動した。
生活の場であったトレセンは今は仕事場オンリー。
特殊なムラ社会であったトレセンは大いなる過渡期に立ち、限られた時間の中で結果を出さなければならないスピードの波に飲み込まれつつある。
コロナ後は一層その波を加速させるだろう。
新規調教師さんの舵取りは困難を極めるに違いない。
弟子(騎手)が師匠(調教師)を訴えるパワハラ裁判などはその象徴だ。
技術(仕事)の神髄の継承は生活態度など全人格に関わる問題だ。
摩擦がおきるのは当然。
耐えられなければそこを去るしか道はない。
当人同士は司法の場で善悪を委ねるなど本意でなかったはずだと思いたい。
もう少し時間があれば、
もう少し気持ちの余裕があれば、
自分がふたりいれば、
近くに話を聞いてくれる存在があれば、
他に当人同士の真意を伝えられる代弁者がいれば、、、、
今、私の頭の中によぎるのは
「お疲れ様ーー」
「いつも大変ねーー」
と声をかけてくれた勇退していく調教師さんやその夫人(女将)たちの笑顔だ。
(嬉しいな!)
(今日も一日頑張ろう!)
私はその心配りを忘れることはないだろう。
喜楽長 純米大吟醸 200周年記念酒
ラスト1本!
720ml
日本酒度 +1
酸度 1.6
使用米 山田錦
精米歩合 35%
使用酵母 14号系自家酵母
価格 5500円(税込)
昨年11月に創業200周年を記念して喜多酒造さん(東近江市)が特別に造られた純米大吟醸。
上箱を引き上げると、花弁が開くように展開されたデザインに9代目を引き継ぐ娘・麻優子さんの強い決意が感じられます。
開かれた部分には、8代目の父・良道さんとの記念対談が記載されています。
酒造りの奥深さ、継承の尊さ等、親子の絆が感じられて、お酒同様、味わい深い内容となっていますよ。