勝馬の全国区化計画発進!! 1億2千万円の男からのメッセージ
前回のあらすじはコチラから→(http://yasui-sake.net/3104)
営業の達人・山本本家のS江氏の手法をつぶさに観察していた私は氏が同じことしか言ってないことに気づく。
しかし、そこにはお客さんが引っかかる強いワードがいくつか有り、とても印象的な営業トークとなる。
私も『勝馬』の前に来たお客さんに何度も同じことを言ってみた。
ズラリと並んだ栗東トレセンを代表する清酒『勝馬』
「栗東トレセンからやって来ました。」
「栗東トレセン内にあるマーケットで酒屋を営んでいます。」
「栗東トレセンから車で約15分ほどのところにある石部と言う土地の蔵で造られたお酒です。」
「『勝馬』と言えば、栗東トレセンのお酒と言うくらい、トレセンを代表するお酒です。」
「栗東トレセンにおられる数多くの調教師さんやジョッキーのみなさんに、近くにある神社への奉納のお酒としてお使いいただいています。」
「『勝馬』は栗東トレセンで勝負事、縁起物のお酒として認知されています。」
先日、デムーロ騎手と一緒に掲載していただいた週刊ギャロップの『勝馬』を指差しながら、
「デムーロさんも店に寄ってくださいました。ギャロップでこのように『勝馬』を薦めていただいてます」
競馬場に持参した週刊ギヤロップ
おかげさまで『勝馬』売り切りました。
デムーロさん、ありがとう!!
等々、ひたすら『勝馬』は栗東トレセンで長きに渡って親しまれていることを強調するように努めた。
何人かのお客さんが話を聞き終わった後、数秒考えてから
「じゃあ、1本もらおうかな」
って言ってくれた時の感激と言えば、筆舌に尽くしがたいものがある。
そうこうしてる内に昼過ぎには『勝馬』は無事完売。
ご購入いただいた皆様、本当にありがとうございました。
(馬が施されているラベルと『勝馬』と言う分かり易い名前と週刊ギャロップを置いておけば何とかなるだろう)
みたいな考えでいましたが(実際、持参した本数くらいは売れたでしょうが)、私の中では何となく満足感みたいなものが違いました。
本日は楽しかった。
S江氏との会話から様々なことを学ぶ。
その金言を列挙しておく。
「すごいですよねー。高いお酒から売れて行くんですねー。ワカから聞いていた通りだったんでビックリしました。」
「ボクは千円台のお酒は売りません。ここにある4千円、3千円台、千円そこそこみたいに並んでるお酒だと、高いお酒しか薦めません。何でかと言うと、高いお酒はやっぱり薦める価値があるからです。その価値を説明していく。千円台のお酒を買う人は値段で決めるお客さんなんで、ボクが何も説明しなくても買う人は買います。もちろん、説明を求められれば、説明はしますよ」
「お酒は『獺祭』を基準にして売ります。それが一番分かり易い。『獺祭』は今、世界でいちばん有名な日本酒です。安倍首相が伊勢志摩サミットで使ったことも勿論ありますが、ユダヤ系の財団の後押しで普及しています。なんで、その『獺祭』よりも優位である事実を挙げていくと外国人は物凄く食いついてきます」
目の前でじっとお酒を見て、無言で考え込むお客さんがいる。
「美味しいですよー」
とS江氏が声を掛けた瞬間、そのお客さんは、くるりと踵を返し、馬券売り場の方へ消えていった。
「今のはあと10秒ボクが声を掛けるのを待てれば、話を聞いてくれたかもしれません。経験上そう思います。今のも声を掛けるタイミングの勉強です。営業に正解はありません。」
「おォー元気?」
S江氏に自ら声を掛けてくるお客さんも少なくありません。
「淀の安井商店の先代である栄蔵さんに『競馬場でお酒売ったら売れますよー。やりましょう』と進言したのはボクなんです。もう20年くらい続いていますよ」
京都競馬場の清酒販売は年に2回、天皇賞と菊花賞が開催される週に行われています。
その年に2度しかない機会に常連さんを作り、会話を横で聞いていると、S江氏との再会を楽しみにしていたお客さんが沢山いらっしゃることに驚かされます。
「こういう場では、名前を把握はできないけれど、買ってくれた人の顔は必ず覚えておきます。あと味の好みですね。どのような種類のお酒を買っていかれたか。『これが新しく出ましたけど、お客さんのお好みの原酒のお酒です。呑み応えありますよー』ってな具合に話を進めていきます。そうすると、⦅覚えてくれてはったんやー。今回も買おうかな-。⦆と人間なるもんなんです。」
「普段の営業でもお客さんの顔、名前、好みは必ず覚えないと話にならないです。そこが基本です。なるべく細かいことまでお客さんの情報を把握しておく。そして、それに沿って、さりげなく物を薦めていく。開業医みたいなお客さんになると、信頼さえしてもらえたら、お任せみたいな感じになります。そういう関係を作っていくのが営業です」
「蔵の現場には、『お金かかっても良いものを造れ』『山田錦は特等米以外使うな』と口うるさく言い続けています。『必ず売ってみせるから』と説得します。実際売ってきますから、みんなボクの言うことを聞きます。その変わり休みないですよ。一年のほとんど、関空にいますし、それ以外は百貨店にいます。」
カッコ良すぎる!!
私が女性なら惚れていたところだ。
パドックでトークショーを行っていた『わろてんか』の女優さん
カワイイ♡
「ここの博三君(現・淀の安井商店社長)とは、同級生なんです。お互い性格が似てて、言いたいことをズバズバ言うので、ぶつかることも多いんですが、淀の安井さんほど自社ブランドのデザインや装丁にお金をかけてくれる店はないんです。なので必ず売ってみせたい。そう思ってます。」
本日の特設ブースから販売開始された新商品の京都産・祝米で造られた『菊燦然』
このような情熱のある蔵の方と仕事がしたい。
今、私たちの店には常に尻を叩いてくれるS江氏のような人材が必要と感じる。
「ボクがまだ酒をぜんぜん売ることができなかった頃、お店廻りをしていて、『松の翠』を気持ち良く『置いていって』って言ってくれたのが、おたくの安井さん(大将)なんです。淀の販売も毎回顔を出してくれて、ウチのお酒を買ってくださってたんです。素晴らしい人ですよ。ボクはそのことを今でも忘れてませんよ」
大将は忘れていたが・・・
今、日本酒のニーズは一升瓶ではなく、四合瓶(720mℓ)サイズである。
『勝馬』の四合瓶の単価が上撰が1000円、純米吟醸が1500円。
贈答品にするには、安価過ぎるという課題がある。
一目見て馬と分かるラベルや『勝馬』というネーミング、お求めやすい価格からライトな層には受けていたと思う。
実際、
「『勝馬』って良い名前だねー」
と言ってくれたお客さんもたくさんいたし、
「栗東インターチェンジを降りたところの『田舎の元気屋さん』に『勝馬』置いてはりますよねー。美味しくて何度か購入しました」
と嬉しい言葉をいただいたお客さんもいた。
ただ、今回お酒を売っていて実感したことが
「このお酒は辛口か?」
と問いかけられることが多かったこと。
そして、
「吟醸酒か?」
(持参していった酒は上撰の普通酒)
と何人かに聞かれたこと。
それに空港では、外国人は圧倒的に純米大吟醸を買って帰るとの話を聞くにつれ、高級な自社ブランドのお酒を持たなければいけないと痛感する。
香り高く、パンチの効いた純米大吟醸の辛口なお酒。
馬を連想させるラベル、蹄鉄を埋め込んだ木箱などで栗東を訪れた人のお土産に、栗東の方から他県へ向かう際の手土産に定着することを目的とするもの・・・
「何かボクで力になれることがあればいつでも言ってください。秋には淀の安井さんと新しいブランドのお酒を造る企画を練っています。栗東のお酒を伏見で造るとなると、それなりに大義名分がいりますが、栗東の安井さん(大将)は淀出身ですし、淀と栗東は姉妹店ですから、そこに物語ができれば売る必然性は出てきます。逆にそれがなければ、ただ単に新しい酒を造るだけになってしまうんでボクはそういうなんは売れないんです。今、淀の安井さんと日酒さん(日本酒販さん)に納めるお酒だけで在庫は手一杯ですが、安井さんに造る側の熱意があれば、喜んで応援させてもらいます。」
と力強いお言葉をもらう。
私も販売や売る技術について、本などを何冊か読んだが、こうした生の体験は本当に貴重だ。S江氏の金言は実は原理的かつ、基本的なことばかりなのだが、百聞は一見に如かずとはよく言ったもんで、氏が自力で積み上げてきた凄みが私にとてもよい臨場感を与えてくれた。
(いつか、全国に10カ所ある競馬場に一緒に酒を売りに行けたら面白いのになー)
そんなことを夢想する。
週明けに、いただいた名刺からお礼のメールを打とうとアドレスを探してみると、アドレスがない。
根っからの現場人間で机に座ってパソコンを開いてる時間があれば、売場に出向いているのかもしれない。
(今日も今頃、関空で酒を売ってはるんかな)
そんなS江氏、実を言うと、酒は一滴も呑まないとのこと。
アンビリバボぉー!(ToT)/~~~
春のG-1シリーズも佳境を迎え、オークス、ダービーと続く大一番を目前に控えています。
安井商店でも栗東トレセンの熱気や盛り上がりに乗り遅れまいと4月新着の馬ジャケワインを入荷いたしました。
シャトー・オー・ムーラン
キュヴェ ルイーズ 14
人馬が一体化したジャケットが大変印象的なボルドーワイン
テロワール 土壌:粘土石灰
標高・無期:40M・南西
品種(収穫) メルロー90% カベルネ10%(手摘み/平均30年)
醸造・酵母 自生酵母
アルコール度 13%
内容量 750mℓ
特徴 1650年にボルドーの地でブドウ樹の植樹を始めた代々続く大規模経営のリュルトンファミリーが手掛けるビオシリーズ。メルローとカベルネをステンレスタンクで発酵後、12か月熟成。褐色を帯びたレンガ色、カシスやダークチェリー、オークの香り、やや直線的な印象ですが、滑らかなタンニンが柔らかく、果実味と熟成感が調和するシルキーなアフターです。
価格 2500円(税込)
コチラの1本箱でプレゼントにもいかがでしょうか?
箱代 150円(税込)